江戸東京博物館―拝啓、ワンウエイ・みずほ銀行殿(3)

 ファインバーグ・コレクション展「江戸絵画の奇跡」を鑑賞がてら、八王子から両国まで、江戸東京博物館に二日続けて行ってきた。何故二日も続けて行ったのか? もちろん、一日では十分な鑑賞ができず心残りがあったからだ。が、もしかして、そこで働く若い女性達の応対が何とも嬉しかったから…?。
 65歳以上は割引料金ということは知らなかった。いかにも無念、受付で言ってみた。「立派な後期高齢者です。喜寿を迎えています。この顔パスではいけませんか?」。
 受付嬢はうふっと微笑って、
「分かりました。でもお顔の色つやからはとてもそんなには見えませんが…」
かつて長野の栂池スキー場や倉敷の大原美術館でも同じようなことがあったことを思い出し、何か浮き浮きと入館した。その気分は帰る頃にもまだ続いて、土産店で解説書や絵はがきの他、買わなくてもよいものまで買い求め、代金支払いの時、浮いた気分で手許が乱れ、財布から銅貨をいくつかカウンター床下に落としてしまった。「あっ、大変」とカウンター嬢が私より先に床下をのぞいて硬貨を拾い集める。
「これで、全部でしょうか?」
「うーん、500円玉がもう一つあったような…」
 心配そうな彼女。もう一度2人で這いつくばって探してみる。が、紙くず一つ落ちていないようだ。後でもう一度探してみます、という彼女の声を背に受けながら、私は他の商品を見に店内を移動し、あれこれ探索の末、また新しい品物を選び、先程のカウンターからいくらか離れた別のカウンターに並んだ。その時、
「ありました!」
 と若い弾んだ声を上げて小走りに駆け寄ってくる女性がいた。先程のカウンター嬢だった。見れば、頭の上まで挙げた彼女の右手の指先には、500円硬貨が周囲の明かりを集めてまぶしいばかりに銀光を放っていた。
 翌日また、江戸東京博物館を訪れた際、そっとその土産店にも足を運び、密かに彼女を見つけて、私は頭を下げた。(つづく)
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

最新コメント

プロフィール

宗内 敦(カラーピラミッド)

Author:宗内 敦(カラーピラミッド)
教育・文芸同人誌『琅』発行人
「書肆彩光」代表者
日本教育心理学会会員
日本ペンクラブ会員
”下記の著、拍手・コメントを頂戴した方に贈呈いたしたく。ご希望あれば、ご連絡下さい。”
 ☆『二言、三言、世迷い言』(書肆彩光 1012)
 

最新記事
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブロとも一覧
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR